物流倉庫・3PL事業者が
AMRを導入するメリット
物流倉庫では、人手不足を背景に自動化・省人化の必要性が高まっています。
人材採用を強化しても必要な人数を確保できず、繁忙期の物量増加に現場の人員だけで対応することが難しいケースも少なくありません。
こうした現場で注目されているのが、AMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行型搬送ロボット)です。
物流倉庫の仕事を細かく分けてみると、人でなければできない作業だけでなく、「棚まで歩く」「台車を押す」「ピッキングした商品を検品・梱包エリアまで運ぶ」といった移動・搬送にも多くの時間が使われています。
AMRは、この「人が移動してモノを運ぶ仕事」をロボットが担うことで、人が付加価値の高い仕事に集中できるようにし、仕組みです。
本記事では、物流倉庫にAMRを導入すべき理由と、ピッキングやパレット搬送をどのように自動化できるのかを解説します。
目次
物流倉庫の人手不足は、「人を増やす」だけでは対応しにくい
物流業界では、今後も担い手不足の深刻化が見込まれています。
国土交通省が2026年3月に決定した「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」でも、物流サービスの供給制約への対応として、自動化・省人化による物流効率化や、物流人材の確保・生産性向上が重要な施策として掲げられています。
- 国土交通省「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/
こうした中、物流倉庫においても、物量増加に応じて必要な人員をその都度採用するだけでは限界があります。
特に3PLやEC物流など、複数の荷主・多品種の商品を扱う現場では、日や時間帯によって物量や作業エリアが変わるため、固定的に人員を配置するだけでは効率化が難しい場合があります。
そこで考えたいのが、「人の人数を増やす」のではなく、「今いる人が人にしかできない作業へ集中できるようにする」という改善です。
AMRは、そのための代表的な手段の一つです。
ピッキングで見直したいのは「人の移動時間」
物流倉庫のピッキングでは、商品を棚から取る作業だけではなく、次のような一連の動作が繰り返されています。
- ピッキングする棚まで歩く
- 商品を確認して取り出す
- 台車やカートを押して次の棚へ移動する
- ピッキングを終えた商品を検品・梱包エリアまで運ぶ
- 次の作業のために再び棚へ向かう
このうち、商品の識別や数量確認、取り出しなどは人の判断や手作業が必要になる場合があります。
一方で、棚までの移動や、商品・容器を次工程へ運ぶ運搬作業は、必ずしも人が行う必要はありません。
人手不足の物流倉庫でAMRを導入する大きな目的は、ピッキング作業を丸ごとロボットへ置き換えることではなく、こうした移動・搬送をロボットに任せ、人の作業時間をピッキングそのものに充てられるようにすることです。
ピッキングアシストAMRなら「人が取り、ロボットが運ぶ」
ピッキングアシストAMRでは、人とロボットが役割を分担します。
例えば作業者を担当エリアに配置し、AMRがピッキング対象の商品がある棚まで移動します。
作業者は指示に従って商品を取り、AMRへ載せます。
ピッキングを終えたAMRは、次の作業場所や検品・梱包エリアへ自律的に移動します。
このように役割分担をすることで、作業者が注文ごとに倉庫内を端から端まで歩き続ける負担を軽減できます。
AMRが複数台あれば、商品を載せたAMRが作業する人の元に順次やってくるため、人は担当エリア内でピッキングに集中しやすくなります。
ピッキング時の搬送に対応するAMR
人が取り、ロボットが運ぶ運用には、「ピッキングアシストAMR」を使用します。
例えば、Bear Roboticsの「CARTI 100」は、最大100kgを積載できる物流・製造向けAMRです。
複数台をまとめて制御でき、保管・ピッキングエリアから次工程までの搬送に利用できます。
既存施設への導入を想定しており、WMS連携の有無にかかわらず運用可能なAMRです。
既存の棚や物流オペレーションをできるだけ活かしながら、まず移動・搬送を自動化したい場合に検討されています。
物流倉庫でAMRが使いやすい理由
既存レイアウトを活かして導入できる
従来のAGV(無人搬送車)では、磁気テープなどのガイドや固定された走行ルートを利用する方式が多く、レイアウトを変更するとガイドや設定の変更が必要になる場合があります。
AMRは、SLAMなどの自己位置推定技術とセンサーを利用し、周囲の状況を認識しながら自律走行します。そのため、人や台車が存在する既存の物流倉庫へ導入しやすく、レイアウト変更に合わせて運用も変更しやすいことが特徴です。
AGVとAMRの詳しい違いについては、「AGVとAMR(自動搬送ロボット)の違い」で解説しています。
物量に合わせて台数や役割を変更できる
物流倉庫では、常に同じ場所で同じ量の搬送が発生するとは限りません。
荷主、商品、時間帯、繁忙期などによって、必要な搬送能力は変化します。
AMRは、複数台をまとめて管理し、必要なエリアへ台数を振り分けることができます。
特に複数の荷主を扱う3PLでは、例えば特定の荷主の出荷が集中する時間帯に、そのエリアへAMRを多く割り当てるといった使い方が可能です。
このように、AMRは特定のエリアや工程に固定せず、物量に合わせて柔軟に活用できます。
搬送データを改善に活かせる
AMRは、走行状況やタスクの実行状況を管理システムで確認できます。
搬送の待ち時間、混雑しやすい場所、AMRの稼働状況などを把握することで、導入後もレイアウトや運用ルールの改善につなげられます。
AMRは導入して終わりにするのではなく、実際の稼働状況を見ながら、人とロボットの配置や作業分担を継続的に見直し、現場に合った運用へ改善していくことが重要です。
パレット搬送も「フォークリフトで運ぶ」以外の選択肢がある
物流倉庫ではピッキングの他に、入荷したパレットを保管エリアまで運ぶために、フォークリフトが長い距離を往復することがあります。
この工程も自動化することができます。
パレットを持ち上げて運ぶ無人フォーク
フォークリフト型のAMRはパレットを直接持ち上げて搬送します。
パレット搬送が多いのであれば、無人フォークは効果的です。
人がフォークリフトを操作し、搬送のみをAMRに任せる方法も
ピッキング作業で搬送をAMRに任せるように、パレット搬送も作業を「荷役」と「水平搬送」に分けることで、比較的シンプルに自動化できる場合があります。
- トラックからの荷下ろしを、有人フォークリフトで行う
- 所定の受け渡し位置へパレットを置く
- 保管エリアまでの長距離・反復的な水平搬送をAMRに任せる
- 搬送先で有人フォークリフトがパレットを受け取り、ラックへ格納する
このように水平搬送をAMRが担うことで、有資格者は、荷下ろしや棚入れなどフォークリフトを必要とする作業に集中できます。
フォークリフトの作業全体を無人化するほどではない現場でも、こうした方法で自動化を検討できます。
重量物の搬送に対応するAMRも
こうしたパレット搬送には、重量物に対応したAMRを使用します。
例えばCARTI Low-Profileシリーズには、最大積載重量400kg、600kg、1,000kg、1,500kgのモデルがあります。
低床型の本体にリフト機構を備えているため、専用の架台などの下へ入り込んで荷物を持ち上げ、搬送することが可能です。
AMRは用途に応じた様々なタイプがあります。
ピッキングの搬送にはCARTI 100、パレットや重量物の搬送にはCARTI Low-Profileというように、倉庫内の搬送工程に合わせて使い分けて自動化することができます。
AMRの導入効果は、物流倉庫の課題によって変わる
AMRは物流倉庫の人手不足対策として有効な選択肢ですが現場の課題によっては、AMRより先に別の改善を行った方が効果的な場合があります。
例えば、次のような倉庫では、AMRを導入しても十分な効果につながらない可能性があります。
- ピッカーの歩行距離がもともと短い
- 移動よりも、商品探索や在庫差異への対応に時間が掛かっている
- 補充待ちや欠品にとってピッキングが止まっている
- ピッキングではなく検品・梱包工程がボトルネックになっている
- 通路が狭く、人やフォークリフト、AMRの混在によって渋滞が発生する
一方で、人が台車を押して長距離を歩いている、フォークリフトが荷役よりも走行に多くの時間を使っているような現場では、AMRの導入が作業の効率化につながる可能性があります。
AMR導入前に確認したい3つの数字
AMRの導入効果を判断するには、まず現状の作業状況を把握することが重要です。
特に、次の3つの数字を確認しておくと、導入効果について考えやすくなります。
1. ピッキング作業のうち、歩行・搬送に使っている時間
例えば8時間の作業時間のうち、商品を取っている時間と、歩いている時間・台車を運んでいる時間を分けます。
AMRで削減できる可能性があるのは、主に後者です。
この時間が全体の作業時間のうちどの程度占めているか把握することで、AMRによる効率化の余地を検討できます。
2. 現在の1時間当たりの処理量
「ピッカー1人当たり何行/時」「倉庫全体で何オーダー/時」など、現在の処理能力を把握します。
AMR導入後も同じ指標で比較することで、処理量がどのように変化したのか評価できます。
3. ピーク時に不足している人員数
AMRを導入する目的は、必ずしも現在の従業員数を減らすこととは限りません。
例えば「本来10人必要だが8人しか採用できない」という現場なら、限られた人数で必要な処理量に対応するため、8人とAMRで10人分の処理能力を確保するという考え方もあります。
そのため、AMRを比較する際は機体の価格だけではなく、「現在の処理量を何人+何台で実現できるか」という視点で比較することが重要です。
まとめ 人が「運ぶ時間」をロボットが担う
物流倉庫の人手不足を解消するためには、採用だけに頼るのではなく、現場の仕事を「人が行うべき作業」と「AMRに任せられる作業」に分けて考える必要があります。
ピッキングでは、商品の確認や取り出しは人が行い、棚間の移動や次工程への搬送をAMRへ任せる。
パレット搬送では、フォークリフトによる荷役は人が行い、長距離の水平搬送を重量物AMRへ任せる。
このように作業をわけて考えることで、すべてを一度に無人化するのではなく、一部の工程から省人化を進めることができます。
アルテックでは、ピッキングや軽量物搬送に対応する「CARTI 100」と、最大1,500kgまでの重量物搬送に対応する「CARTI Low-Profile」を取り扱っています。
物流倉庫のレイアウトや搬送物、現在の作業人数に合わせ、どの工程をAMRへ任せると効果が出るかを含めてご提案します。
執筆・監修
執筆:スマート物流ライティングチーム
物流現場の課題解決に役立つ情報を、わかりやすくお届けしています。
監修:アルテック株式会社 物流システム営業部
自動倉庫や自動搬送ロボットをはじめとする、物流自動化ソリューションの提案・導入を担当。8年以上にわたり様々な現場の課題解決に携わってきた経験をもとに、本記事を監修しています。