自動搬送ロボットの選び方
Smart logistics column自動搬送ロボット(AMR)を選ぶ上で、どのような基準で選べば良いのか、という内容についてご説明いたします。
安全性を評価する
安全性とは、共に働く人・運ぶモノ・周囲への安全性を意味します。
どんなに高機能なAMRであっても、安全性に懸念があれば選ぶべきではないでしょう。
AMRが「協調ロボット」とも呼ばる意味=人と同じ空間を共有する
AMRは従来型のAGVと異なり、人と同じ空間を共有し、人と連携して働きます。つまり、人が歩きフォークリフトやけん引車が走るのと同じ空間で、ロボットがある程度のスピードで走行し、モノを載せて旋回し、重量物を受け渡すということです。
人やモノや壁を検知し十分な距離を保つ、事故を抑制するといった安全性の確保が重要です。
自動車業界の研究開発
この分野について同様の技術研究が行なわれているのが自動車業界です。
自動車はAMRと比べものにならない程高速に、大きな車両が、人を乗せて公道を走ることを目指して研究開発が行なわれています。
AMRにもこの自動運転の技術と同じく、レーザーによるセンサー(LiDARセンサー)が搭載されていることが一般的であり、ロボットが周囲の物体を認識し、自分と相手の距離を把握します。
AMRは自動車よりも速度は遅く、秒速1~2m(時速3.6~7.2km)程度で走行します。
その意味ではAMRは自動運転車よりはハードルは低いように見えます。実際、既に多くのAMRが構内で本稼働しており、その安全性を実証しています。
しかしながら、AMRは人の近くで自動で動くロボットであり重量物を載せ走行し積み卸しを行なうという性質を考えると、やはり安全性への高い配慮は必須です。
安全性の検討ポイント例
- センサーの感度と精度、走行中に十分な距離を確保して停止できるか
- 積載物を落下させたりしないか
- 自動車と同じく、音や光などを発して所在や進行方向を知らせる機能の有無
- 万一人やモノと接触した際、適切に停止やバックなどの望ましい対処ができるか
生産性を評価する
AMRにおける生産性とは、より多くの仕事をこなすということです。
AMRは自動搬送ロボットであることから、基本的にはモノを運ぶ効率が高いものが生産性が高いと言えることから、スループット(単位時間あたりの処理量)がAMR選定におけるコア指標として設定されます。
AMRの生産性(スループット)を
測定するポイント
運ぶ荷物の重量
モノを運ぶ際、一度に運べる量が多いのであれば往復する回数が少なくて済みます。
可搬重量(運べる最大の重さ)はAMRの機種毎に異なりますが、重量物に適した機種であれば1,000kgを優に超え、最大可搬重量1,900kgという高効率の機種もあります。
車両スピード
早い方が生産性が高いと言えます。
(もちろんこのスピードは、高い安全性と、正確な現在地把握が前提です。)
AMRの速度は概ね秒速1~2m(時速3.6~7.2km)程度です。搬送物の重量に寄り変動します。
また、機種によりコーナーで減速する度合いに差があります。
構内レイアウトや通路の形状、担わせたいジョブによってはこのコーナーでの減速が生産性に大きな影響を与える場合があり、注意が必要です。
カタログスペックや、モノを載せない状態での直進時の速度のみで比較しないよう注意しましょう。
ダウンタイム率
AMRは様々な理由で稼働できない時間が生じます。代表的なものとして、「充電時間」「ハードウェアの故障」そして「自己位置の喪失(迷子)」があります。
AMRはAGVと異なり、物理ガイドの上を走るのではなく、仮想的なマップデータを持ち、自己位置を把握して走ります。それを実現するための技術がSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と言い、それにより自分が今マップ上のどこに居るかということを把握します。
しかしこれは難易度が高い技術で、この部分の完成度によってはAMRは迷子になりやすく、その間ジョブをこなすことができなくなり、この部分についてもAMRベンダーに確認することをお勧めします。
ソフトウェアの秀逸さもまた、
効率を決める重要ファクター
モノをどれくらい運べるかという軸に加え、各AMRをどれだけ効率良く稼働させられるか、という観点もまた重要です。それにはソフトウェア(中央管理のフリート管理システムの優秀さ)も重要です。
いつ充電するのか
AMRが充電するタイミングを見極めることも重要なポイントの一つです。
AMRは電動のため充電が切れると停止します。完全に停止する前に中央管理のインテリジェントなシステムが、予定されているジョブや各AMRの状況を見て、生産性を最大化させるよう、適したタイミングで充電させます。
稼働中の各AMRをどう配備するか
AMRはAGVと異なり1台でいくつものポジションを担うことが可能なため、例えば1台抜けても業務が回るよう、現在の体制において効率が良くなるよう、各エリアの負荷を見て最適配置を行ないます。
稼働中のAMRに差し込みでジョブが生じたとき、位置情報やジョブの状況から、対応するのに最適なAMRを選び、向かわせるということをします。
そのような自動的に最適化するフリート(車両群)管理のシステムの出来が、AMRの導入による算出価値の高低を左右します。
人による改善活動を助ける機能の
有無
AMRの良いところとして、中央管理のフリート管理システムには大量の動作ログが蓄積されるということがあります。どの道が混雑しているのか、どこでスピードが低下しているのか、ジョブの成功率や失敗・中止率はどの程度か、といったデータを視覚的に見ながら、構内レイアウトの変更や人とAMRが連携するプロセスの改善を行い、効率を改善することが可能です。
そのような改善がどこまで「直感的に」かつ「効果的に」行える仕組みが整っているかも選定の上で重要な要素です。もし大量のデータ分析にデータサイエンティストが必要であれば、お客様が構内で、即座に改善するということは難しくなるでしょう。AMRはAIを搭載したインテリジェントなマテハンツールですが、既に現場のためのツールに落とし込まれ、プロセス改善の知見を享受できる時代になっています。
人の介入に役立つ通知機能の
充実度合い
何らかのトラブルがあった際には、早期に復帰させることが必要です。
そのためにはイベントの発生を検知し、自動で管理者に通知する機能が重要です。
- SMS
- メール
- Slack
- その他の外部ツールやシステムとの連携
など、通知には様々な方法があります。御社の現場に適した通知が行えるか確認しておきましょう。
使いやすさを評価する
使いやすさとは、大きく分けて、「システムとしての使いやすさ」と、「AMRハードウェアとしての使いやすさ」があります。
システムとして、現場での操作画面の使いやすさ
現場でタブレット端末・PC・呼び出しボタンを使いAMRに指示を与える際に、使いやすいかという観点です。
システムが使いやすいということは効率を高めること、新しいものを導入する負荷を軽減する上で重要です。
AMRハードウェアとしての
使いやすさ
頑丈さ
例えば、頑丈さは使いやすさに繋がります。ちょっと何かとぶつかった程度で壊れてしまうのであれば、フォークリフトやけん引車が走り回る構内で安心して使うことが難しいでしょう。
分解のしやすさ
修理の際に容易に分解して現場でのメンテナンスが可能であれば、使いやすいハードウェアと言えるでしょう。
拡張の容易さ
AMRは天板にモノを載せて走ることが一般的ですが、この天板にアタッチメントを取り付けて様々な機能を持たせることも可能です。そのような拡張できる選択肢が標準で揃っているほど、拡張は容易と言えます。
また、標準で存在しない拡張機能であっても、開発・組込が容易なようプラットフォーム化されていれば柔軟性が高いと言えます。
AMRを導入した後に、やりたいことが増える可能性があります。そのときに全く拡張できないのであれば場合によってはAMRシステムの入れ直しになるか、諦めることになる可能性があります。
ベンダーに「どのような追加開発が可能ですか?どのような事例がありますか?」ということを聞いてみると良いでしょう。
価格を含め総合評価する。
これまで紹介してきたAMRの選定軸ですが、高い品質が要求される日本の産業界において、十分導入可能と判断される製品は2021年11月現在でもまだまだ限られているというのが実情です。
その中でも選ばれているのが、弊社が取り扱うOTTOであったり、BlueBotics ANT®を搭載したAMRです。
弊社は世界最高峰の自律走行技術を有するベンダーの製品を日本市場で販売・導入支援から運用まで一貫してサポートする産業機械商社です。
日本市場において2017年から先進的な取組みをお客様と共に行なって参りました。 その知見に基づき、お客様に最適なAMRソリューションのご提案が可能です。 AMRの導入についてご検討の際は、是非弊社にお問い合わせください。